そんなに怖いものじゃない?多くの人の硝酸態窒素に関する誤解

      2017/04/09

当サイトでは、時折農業界に関する誤解や偏見についての情報を発信していこうと思います。



硝酸態窒素?

まず最初に、『硝酸態窒素』についてです。
ネット上でよく見かけられるこの言葉ですが、一体何か皆さん知っていますか?よくあるのが、「野菜に硝酸態窒素が蓄積して健康を害する」という主旨の文面です。一体これはどういうことなのでしょうか?……まずはこの問題の発端から解説したいと思います。

過去に欧米で起きた問題では、乳児が硝酸態窒素を多く含む野菜を食べて酸欠になったという事件がありました。簡単に言うと、これは体内で硝酸態窒素由来の亜硝酸態窒素が発生して、体内の酸素を奪ったためだということでした。そして酸欠になり、チアノーゼを発症した乳児はブルーベビーと呼ばれ、この症状にはブルーベビー症候群という名称が付けられました。どうやらこの事件が未だに尾を引いているようで、硝酸態窒素は危険だ、という論調が未だに繰り広げられているようです。

ですがこの事件の本当の原因は、体内で発生した亜硝酸態窒素ではなく、摂取する前に既に食事において発生していた亜硝酸態窒素が問題だったようです。

硝酸態窒素ができるまで

ここでまず、硝酸態窒素生成までの流れを見てみましょう。タンパク質(窒素が含まれる分子)が分解されると、それは次第にアンモニアに変化して行きます。そこから、硝化菌という微生物によってさらに分解され、亜硝酸態窒素を経て硝酸態窒素へと変わります。……つまり、窒素化合物であれば、それは生物由来だろうが、化学的に合成されたものだろうが、何でも最終的には硝酸態窒素へ変化するということです。

この事から分かる通り、硝酸態窒素とは世界中のどこにでも存在するものであり、特別に危険な物ではありません。上記において説明した事件でも、そもそもの問題は家畜小屋の近くにあった井戸水を使って乳児用の食事を作った、というのが原因であり、さらにはそれを常温で保存しておいたというのが問題だったようです。

硝酸態窒素は水に溶ける性質があるため、このケースでは、家畜糞由来のタンパク質が分解されて生成された硝酸態窒素が地下水へと混入し、高濃度の硝酸塩が含まれた水が作られました。そしてその水を使って作ったスープを常温で放置してしまったため、硝酸還元菌が働き、亜硝酸態窒素へと変わってしまったのでした。……要するにこれは、『腐りやすい水を常温で放置してしまった』という、食品衛生上の問題だったということです。

さらに言えば、このブルーベビー症候群、アスコルビン酸(ビタミンC)を投与することにおいて、簡単に改善されるそうです。




日本における硝酸態窒素問題

ではこの問題、日本においてはどうなのか?……というと、ほとんど起こらないと言ってもいいでしょう。実際、日本では全く起こっていないと言ってもいいにも関わらず、何故これほど人々に騒がれるのかがよく分かりません。そんなに騒がれるほど危険だというのならば、その危険性が明らかになっていなかったこれまでに、もっと多くの事件が起こっていたとしてもおかしくはありません。

では何故、この問題が起きなかったのか?……それは上記で指摘した食品衛生上の問題という部分以外に、もう一つ理由があります。

それは、日本の環境です。

騒いでいるほとんどの人が誤解しているのですが、欧米と日本の環境はかなり違います。乾燥冷涼のヨーロッパや、大陸である米国などと違い、日本は温暖多湿で島国という特徴があります。前述した通り、硝酸態窒素は水に溶けて水系を移動します。なので、あまり土壌中に溜まること無く流れていってしまうか、日本においてはどこにでも生える植物によって吸収されてしまいます。一方で、雨や川が少ない欧米であれば、いつまでも土壌中に溜まってしまうことも考えられます。

こうした背景の違いから、EUでは環境汚染に対する規制が強化されましたし、生態系の破壊に関しても、より厳しい視点で見られているようです。私自身は、日本において『環境を守る』ということは、『生態系を撹乱し続けること』だと思っています。その地域の環境によって生態系の特徴は違うので、一概に「こうすればいい」と言えないのが環境問題の複雑な部分でもあります。私はこのような状況をきちんと理解することが、人と自然が調和して生きていくための最も重要な視点ではないかと思います。

……最後に、危険だ危険だと騒がれている硝酸態窒素ですが、こうした情報とは全く真逆の結果が証明されていることを記載しておきましょう。

・国立衛生試験所によるラットの実験で、亜硝酸塩や硝酸塩はガンを抑制する効果があるという実験結果が出ている
・1998年にノーベル賞を受けたイグナロらの研究の結果、硝酸塩は人間の体内で普通に代謝されている産物であると分かる
・口中バクテリアで亜硝酸塩になるが、これは虫歯予防に役立つ
・さらに胃酸の中で一酸化窒素に変化し、これはストレスで緊張した胃をほぐす効果がある
・さらに胃ガンの原因となるピロリ菌を抑制する

気になる方は、ぜひ調べてみて下さい。

【参考リンク】硝酸態窒素と発ガン性について

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