農業の海外進出の失敗事例5選とその悪影響

      2017/04/07

近年、農業の海外展開が話題となっています。ですがその実態は一体どうなんでしょうか?

以前、海外進出についてはこちらの記事で触れました。

海外にイチゴ栽培を展開する方法 #海外進出 #イチゴ栽培

メディアでは様々に持ち上げられる農業の海外進出ですが、先月、一ヶ月ほどかけて東南アジア諸国を回り、現場の情報を集めてきましたので、海外進出の現実と陥りがちな事例をいくつかお知らせしたいと思います。




農業の海外進出の失敗事例5選

色々ヒアリングした結果、メディアで騒がれるほどには皆うまくいっていないようです。その代表的な事例を5つ挙げておきたいと思います。

  1. 「作物が作れない!」

    安定して作物が作れずに失敗する場合。

    最初に紹介したリンク先記事では、気候や環境が違うので栽培が失敗しやすい、という風に紹介しました。もちろんそれもありますが、今回さらに大事だと思ったのはもう一つ。それは、『全くの異業種から参入している所が多い』ということでした。

    どうも農業は甘く見られているのか、これまで全く畑違いの異業種から参入してくる企業が多いようです。しかも「やってみて覚えればいい」という感覚で。これは確かにできなくはないと思いますが、異国の地で0から始めることを考えると、相当ハードルが高いと言えるでしょう。

  2. 「農家が働かない!」

    雇った現地の農家が意図した通りに働いてくれずに失敗する場合。

    何だかんだでやはり、日本の教育システムは全体の底上げには機能しており、誰でも一定の水準のレベルには達することができます。ですが、途上国の農村地帯にはそのようなシステムはありません。その結果どうなるかと言うと、「みんな自分の勘や経験則に従って働く」ということです。

    土地も文化も言葉も違う場合、日本人と同じシステムで働かそうとするのには大変な労力が掛かります。こればかりはどうにもできないため、根気強く教育を行うか、最初から日本人を連れてくるか、ある程度の覚悟を決めておいたほうが良さそうですね。

  3. 「作物が運べない!」

    意外と見落としがちなのが流通の部分。

    一言で言うと、「コールドチェーンができていない」ただそれだけです。日本で農業に携わっている方ならすぐに分かると思いますが、異業種から参入した方には分かりにくい部分なのではないかと思います。

    日本の高品質な作物を作って売りたい!という目標はすぐに誰でも思い付くのですが、それを実際に実行しようとすると、日本の高度なインフラが揃って初めて実行可能である、ということが分かります。インフラの整っていない途上国で、数時間も運んで品質を保とうとするのはかなり大変であるということは、現地へ行ってみればすぐに分かるんですけどね。

  4. 「作ったけど売れない!」

    たとえ良い作物ができて、問題なく運べたとします。ですがそれでも思ったほど売れない、という問題。

    そもそも日本は、世界で農産物価格が非常に高い国の一つです。下手すればその半額以下の途上国マーケットにおいて、予想していたほど売れるかどうか?というのは、想像しにくい部分です。確かにどんどん所得は高くなっていくし、日本クオリティの食べ物を求めているニーズはありますが、それでも実際に買ってくれるかどうかはまた別の話。これは日本でも同じですが。

    さらに、現地の元々の文化によって人気がない作物などもありますので、今日本で人気の物を作って売ったとしても、予想通りに売れるとは限りません。その辺りを誤解している(特に異業種参入の)方は多いように思います。

  5. 「そもそも進出しない!」

    とは言え、これらの問題はやりようによってはクリアできる問題ですし、今回行ってみてそれ以上に現地の発展の勢いの凄まじさは感じることができました。……ということで、『何もしない』『視察してみたけどリスクが高そうなので、そもそも進出しない』というのが、一番ダメな問題だと考えています。

    もう既に、様々な国からの資本は入ってきているので、日本ブランドが強い影響を与えている今のうちから、しっかりと現地に根ざすのが最も重要なのではないかと思います。

    なので、上記に挙げたような失敗のリスクを減らしながら経営を行わなければ、下記のようなことが起こってしまうと考えます。




これらの失敗が起こす悪影響

  1. 技術、設備が盗まれる

    これは実際に起こったのを見ましたが、折角高いお金を払って日本式の栽培方法を現地で作ったとしても、撤退する時にはそれを持って帰ることは難しいのではないかと思います。

    結果的に、それらの設備は現地へ置いてくることになる。すると、土地を貸してくれていた所が「そうか〜、それならもったいないし使おうかなぁ……」となる。そして今度は現地の方がその設備を利用して同じような栽培を始める……という流れになるんですね。

    撤退に限らず、突然の地価の値上げなどで、これは既に実際に多くの場所で起きている出来事のようです。

  2. 品種が盗まれる

    品種改良は、農業において最も重要なポイントの一つでもあります。特に日本の品種に関しては、諸外国に比べて結構特別な種類もあり、新しい品種は特許によって守られていたりもします。

    ですが古い品種とは言えど、イチゴのように長く使われているものもあるので、品種が流出したらそれを元に一気にパクられてシェアが奪われてしまう……といった韓国の事例も存在します。

    韓国産イチゴは甘いのか

    こうした危険性は、一番注意しておかなければなりません。

  3. 討ち死に、特攻がはびこる

    何より、このような状態が野放しになっていると、いつまで経っても有効な方法が見つからず、ノウハウも溜まっていきません。その結果、日本人の得意技である『個々人による特攻隊の討ち死に』だけが増えていくことになり、モタモタしている間に諸外国に遅れを取ることになります。

    さらに、メディアによる期待だけを描かせるような報道の仕方、またその検証結果の周知が行われないことが、この問題に拍車を掛けていきます。

    というわけで、こうした問題に対する私なりの解決策を提案しておきたいと思います。




結論:最初から専門家を入れてスタートダッシュをかけるべき

  1. エースを投入しろ!

    異業種から参入した方に特に多いようなのですが、「とりあえず適当に行きたい奴を選んで……」というパターン。海外進出は、日本で新規事業を立ち上げるのに比べても、さらに難しいベンチャー事業です。その人選を適当に選んでしまうと、現地のゆるくて刺激的な文化に染まってしまい、あっという間に困難に負けて仕事をしなくなってしまう場合があります。(実際に私はそうした事例の後に行ったので大変でした)

    なので、全てを任せてもいいようなパワーのある若手のエースを投入して、その人物に現地のことを任せましょう。よくネット記事で出てくるような「決済は本社が握っているから、その決断を待つ間にチャンスを逃す」というようなことが起こらないようにしなければなりません。とにかく臨機応変にスピード感を持って対処することが大事です。

  2. 可能な限り金を賭けろ!

    農業や自然環境の基本的なことを知識として理解していないと、そもそも何が原因でうまくいかないのかも分かりません。上記で述べた原因のことを踏まえても、プロの農家や農業栽培のコンサルタントを入れたほうがいいでしょう。そうでなければ、後から参入してくる所にすぐに抜かれてしまいます。

    無駄なお金を払わないためにも、きちんとした技術+経営感覚、そして現地の状況が分かっている専門家にバックアップしてもらい、栽培で必要な部分にはしっかりとお金をかけて準備した方がいいです。もちろんリスクもありますが、事業が軌道に乗ってくる時に無駄な労力を使わないように準備しておきたいものです。

  3. 覚悟を決めろ!

    総じて言えることは、「中途半端に進出するぐらいなら、今は様子を見ておいたほうがいい」ということです。問題点の部分で指摘した通り、半端な覚悟で失敗すると、逆に外国資本を勢いづかせることにもなるので、そもそもそういう所は今はタイミングではないのでしょう。

    現地の方々の邪魔をしないためにも、覚悟が決められない所は静観しておいた方がいいです。または、他に勢いがありそうな所を支援するようにしましょう。

    裏を返せば、今この時点でこれらの条件を満たして、覚悟を決めて進出した所はかなりのシェアを占められる可能性がありますし、さらにそのノウハウを活かして、他の国や地域にも横展開することが可能になってきます。ぜひそうした所がもっと増えてほしいと願い、今回の記事を書きました。参考にして頂ければ幸いです。

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