【異世界農家】#19 やめろそれは。色々とギリギリ過ぎるだろ……

      2018/04/13

「全く、ばーちゃんたちは強情だからなー……」
「うむ、ご老体方は大分頭が固くなってしまっていかん。やはり女も歳を取るとああなってしまうのだろうかな……」
「……」

テントから追い出されてしまった俺たちは、再び俺の家に向かいながら話していた。意外だったのは、どうやら強硬派のような思想を持っているのはお年寄りたちだけで、ルルガたち若者は別にそれほどコボルドたちへの敵対心は無いらしい。

というのも、彼女たちが物心付いてからは、ほとんど村に被害は無かったからだそうだ。だが、長老たちが若かった世代には、コボルドたちとの大規模な争いがあり、その時の感情を未だに引きずっているからのようだった。

(だったら、何とかやりようはあるかな……?)

俺の持ち前の策略家の部分が首を擡げてくる。……こうした微妙な人間関係の機微をやりくりするのは、外からやってきた移住者の必須スキルだ。どれだけネットで悪口を書いていたとしても、実際に会った時はにこやかにさわやかに挨拶をするのが、健全なムラ社会というものだ。

さて、話はズレてしまったが、次に俺が狙っていたのは、『コボルド側』からの視点だった。『村側の状況』は分かった。そこへ別の角度からの視点を加えれば、今起こっている視えない現象の輪郭が浮かび上がってくるはずだ。

コボルドを倒して絶滅させるのは、容易いかもしれない。だが、その過程や後々に深い禍根を残すことになるかもしれないのだ。……できればそれは、慎重に行いたかった。

「な、なぁ……ちょっとあの子の様子見に行ってもいいか?」
「別に見るぐらいなら問題ないと思うけど……?一体どうするんだ?食べたいのか?」
「食べるかっ!……てか俺が言ったら怪しい意味になるだろ!やめろよ」

……思わずマジ突っ込みしてしまった。

「別に話すぐらいは大丈夫だと思うが、村の決定に逆らうというのはさすがの私もオススメできないぞ?ロキ殿。奴は明日には処刑されることになってしまうようだからな」
「ん、うん……。まあ、とりあえず行ってみようぜ」

村の中心に近い場所に、一際丈夫な竹で編まれた格子状の籠に、コボルドの子供は入れられていた。

「とりあえず、大人しくしているようだな……」
「あ、ああ……」

三人でカゴに近づいて行くも、コボルドっ子は全く気付いた様子も無い。それどころか、うずくまって肩を震わせたまま……って、もしかして泣いてる!?

よくよく見たら、スンスンと鼻をすすって泣いているようだった……。
相手が子供だということもあり、さすがにちょっと罪悪感を覚える三人。他二人の顔を見れば、そんな様子が丸わかりだった。

「お、おい……お前」

提案した手前、代表して俺が話しかける。

ようやくこちらに気が付いたコボルドっ子は、顔を上げてこちらを見た。
しかし、俺と目が合うと、また再び顔を歪ませて、うっうっ……と泣き始める始末。しばらく待ってみたものの、全然様子は変わることなく、結局何も聞き出せずに時間だけが過ぎただけなのだった……。

 

***

 

「なんだあのコボルドは。全く話にならないではないか……」
「ホントだな。あんなのなら食ってやった方が良かったな」
「やめろそれは。色々とギリギリ過ぎるだろ……」

ブツブツと文句を言いながら、俺たちは解散してそれぞれの家に帰った。結局、当の本人があんな感じでは、解決策も何もどうしようもない。

何も有益な情報を得られぬまま、俺もいつものテントに戻って、分けてもらった食事を食べることにする。そして薄い煎餅みたいな炭水化物を頬張りながら、今後のことに思いを巡らせるのだった。

……相変わらず、味気のない食い物だ。多少塩っ気のある小麦粉を焼いただけのような感じだろうか。味付けをしようと思えば、唐辛子系を付けるという手もあるのだが、まああんまり辛いのも微妙なので、我慢してトルティーヤ的なものを囓ることにする。……唯一、食後のパパイヤっぽい果物だけが救いだ。この熱帯のフルーツだけはとにかく増やしたい。

そんなことを考えていた時、遠くから誰かが叫ぶような声が聞こえた。
悲鳴のような感じではない。あれは……罵声だろうか?先ほどのコボルドが囚われている籠の方からだ。

(そういえばアイツ……飯も食ってないんだろうな……)

あまり食欲も湧かなかった俺は、残った食べ物を持って、再びあの子供コボルドの所へと歩いて行ったのだった。

 

***

 

広場には、薄暗く篝火が焚かれており、その仄暗い灯りに照らされるようにコボルドが捉えられている大きな籠が置いてある。そして、何かあった時のためにすぐ対応できるよう、見張り用の簡易テントが近くに設置されており、俺の足音を聞くと、そこからニュッと出てくる人影が見えた。

「おや……ロキ殿ではないか。一体どうしたのだ?……ま、まさか私に夜這……!?」
「全然違うから」

見張りはミミナだった。

どうやらルルガも一緒にいるようだが、彼女は既に夢の世界へ行ってしまったようだ。面倒くさいことになる前に、俺はミミナに「ちょっとコボルドと話したいことがある」と告げると、早々に彼女の前を去る。

ミミナも特に何の懸念もなく通してくれたようだ。……まあ、彼女たちの聴力であれば、例えテントの中であっても何かあればすぐに分かることだろうが。

さて……。

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