【異世界農家】#23 よし分かった!仲間だ!今から仲間だぞ!!!だからもっと

      2018/06/06

「これからどうしたいか……?」
「ああ。お前はこれからどうやって生きていきたいんだ?……いや、『何をしたい』んだ?これからもずっとそうやって皆から蔑まれたまま、あの中で生きていきたいのか?」

半ば、かつての自分に問いかけるような真っ直ぐな瞳で、俺は目の前のはぐれコボルドに語りかける。……この問いは、俺がかつて農業を始めようと思った時に、自分で自分に対して言い聞かせた言葉でもある。

『何をして生きていたいのか?』

単純だが難しく、シンプルなのに、多くの人はそれができない。……その理由は、誰もがみんな「覚悟」が持てないからだ。自分が好きなことだけをやっていくことは、とても難しい。

だからこそ「覚悟」がいる。

「ボクがしたいこと……?」
「お前には、無いのか?……どんな苦労をしていても、たった一人孤独になったとしても、それさえできれば楽しくなれるような「何か」は?」
「ボクは……」

覚悟をすることは、とても怖い。

もしかしたら、今は好きなことがいずれ嫌いになってしまうのではないか……?

それでもしダメだったら、自分には何も無い空っぽの人間になってしまうのではないか……?

そんな恐怖がつきまとう。

しかし……。

 

「そうだな……ぁ。もしできるのなら、ボクはもっと色々な所へ行ってみたいです!それで、色んな場所の食べ物を、色々おいしく料理をして、もっとおいしいものが食べられたらいいな……。そうだ!ボクは料理をするのが大好きなんです!」

『よし。それじゃあ一緒に行こう!』

「えっ……!?」

 

覚悟した未来に訪れるかも知れない、いくつもの不安や後悔。立ち塞がる、幾度もの挫折や悲しみをも乗り越えていける……『一筋の光』。それさえあれば、他に理由は要らないのだ。

目の前の少年の瞳の中に、輝くその星を見つけた瞬間、俺はそう語っていた。

後はそう……『仲間』がいれば、もう何も要らないよな!

 

***

 

「……あ、終わりましたか?どうでした?」
「ああ。……アイツは仲間にした」
「え……えぇっ!」

野営用のテントに戻ってきてあっさりと言う俺に、案の定ミミナは驚嘆の声を挙げる。

「ろ、ロキ殿、本気ですか!?」
「ああ、本気だ」
「いや流石にそれは……いくら私でも、賛成しかねるぞ」
「そうか」
「一体どうしたのだ?まさか魔法にでも掛けられたのか……?もしくはロキ殿、実はそういう趣味があったとか……」
「人聞きの悪い事を言うな。一応アイツは男らしいぞ?……それに魔法を掛けられたんでもない。俺には今回の問題を解決するいい方法が浮かんだんだ」
「……本当か?」
「ああ。悪いけど、寝てるルルガを起こしてきてくれないか」

このままでは、明日の朝にはアイツは見せしめだ。今夜中に何とか方針を立てなければならない。半信半疑のミミナがテントを出て戻ってくるまでの間、俺の頭はフル回転をしていた。

 

***

 

「あ……あの……『シバ』と言います……」
「え?何!?」
「ヒッ……!」

呼んできたルルガとミミナ、そして俺とシバと名乗った子供コボルドは、再び籠の前で集まって話をしていた。

まあ予想通り、怯えたシバと黄金耳族の二人をうまく落ち着かせるのには苦労した。長老たち程ではないにしろ、少なからずコボルドたちは先ほど戦った相手でもあるし、うまく利用するぐらいなら別に構わないが、仲間として自分たちと同じ側に入れるというのには抵抗があるらしい。

さらに、シバのその性格からして、豪快なこの女二人とは合わないだろうという事は容易に想像ができた。長くなるので端折るが、こんな風にグダグダとしばらく話が長引きそうになったため、俺は最終兵器を投入することにした。

「オイお前ら。何も言わずこれを食ってみろ」
「ん?何だこの怪しい奴は……?」
「いいから俺のお墨付きだ。ほら、これと一緒に」

そう言ってトルティーヤの欠片を二人に渡す。訝しがりながらも、俺の推薦ということで一口口にしてみると……?

「にゃーーーっ!!!なんじゃこりゃ……っ!?」
「う……うまいぞ!これは一体何という料理だ……?」
「うるせえルルガ。みんなが起きてくるだろ!静かにしろ。……いいか、これはな『キノコのディップ』だ。こいつが作った」
「な、なんと……!?これが……キノコ……?」
「もう無いのか?……もっとくれ!もっと!」
「うるせえルルガ!だから静かにしろ。こいつを仲間にすれば、いくらでも手に入る」
「よし分かった!仲間だ!今から仲間だぞ!!!だからもっと」
「うるせえ(パカッ)」

興奮し過ぎなルルガの頭をはたいて黙らせ、話を元に戻させる。ミミナも興味津々にキノコディップの様子を眺めていた。

……やはり、最終兵器の力は絶大だったらしい。その絶大な反応に、シバの方が逆に驚いて目を見開いている。……あ、ちょっと涙目になってるな。

ともかく、これで何とか全員のコンセンサスは取り付けたようだ。やはり美味いものの力は絶大だ。そして先ほどシバにも、俺が作っている『異世界の食べ物』の話をして、バッチリ興味は食いつかせている。

とりあえずはこれで仕込みOKだろう。では次のステップにかからないといけないのだが、本当に大変なのはここからだ……。

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