遷移の初期段階とパイオニア植物

      2017/04/09

農業生態学についての続きです。



輪作という方法

察しのいい方は気付いたでしょうが、前回の考え方は『輪作』と呼ばれ、古くから農業では行われてきたことです。連作障害が出ないように、順に作付けする品目を変えていく……。これが輪作です。

基本的には、この輪作と同じ考え方なのですが、これからはこの輪作をもう少し科学的に捉えて実践していくことが重要なのではないかと思います。そもそも連作障害とは、生産者側の耕作ミスにより土壌養分バランスが狂ってしまうということを除いた場合、同じ品目を作った事による『養分の偏り』または『病虫害の優占』が主な原因となっています。このことをもう少し具体的に見ていくと、そこには生態系の遷移が土壌にどのような影響を与えているか?……ということが見えてきます。




生態系の遷移の流れ

遷移の流れを見てみると、まず最初は全くの無機状態の土となります。『土壌』という言葉には、どうやらある程度肥沃になった無機状態と有機状態の混合された場合を示すようなので、ここでは土……鉱物と言ってもいいかもしれませんね。そう表現しておきます。

この鉱物の状態とは、全くの無機状態であり、物理性・化学性共に元々持っている土質の由来である性質がほとんどです。……土壌についての説明は、ここでは省略します。生物性はかなり低いと言えますが、地表に既に露出していたのであれば、空中に飛散する微生物たちがうっすらと積もってき始めていることでしょう。こうした状態から、様々な外部からの影響を受け始めます。

鉱物に関しては、『風化』という現象が起こり始め、雨や風、そして生物たちの干渉により、徐々にその性質を変えていきます。元々持っていた養分(吸着させていたイオン状の元素)が溶脱していったり、その物理的塊が細かくなっていったり、生物たちによる反応によって団粒化していったり……というようなことです。

これと同時に、植物がそこへ登場し始めます。このパターンが、植物種によって様々な手段を用いてくるわけですが、大まかに分けると、『自力で移動してくる』『風に乗って飛んでくる』『動物によって運ばれる』などの場合があります。これらの種子の移動手段に優れた者たちのことを『開拓種(パイオニア)』と呼びます。……まずは、これらのパイオニア植物たちが土壌へと侵入してくるのです。




植物種の違い

遷移の話は一旦ここで止めて、これらの種の違いについて見てみましょう。

まず、『自力で移動してくる』植物の場合。これは主には、ツルやランナーと呼ばれる茎を伸ばしてくる植物だったり、地下茎によって増えていく種類のことです。これらは単純で、元々の根から養分を供給してもらいながら、その体を伸ばしていきます。物によっては、伸ばした先で再び根を発生させて、そこで新しい体を作っていく場合もあります。……こうして、その群落を広げていきます。

続いて、『風に乗って飛んでくる』植物の場合。代表的なのが、タンポポですね。これらは私の知る限り、ほとんどキク科の植物に分類されるようですが、中にはカエデのように種子に羽が付いている翼果というものもあります。キク科の場合で考えると、風で飛ばされた場合にはどこに着陸するか分かりません。……なので、辿り着いたその地で生きていくしか無いわけです。ですので多くのキク科の植物は、直根性で根を深く張り、結構厳しい環境で育つことができるものが多いようです。

このことを考えてみると、おそらくキク科の植物は『無機土壌に強い』植物なのではないかと考えられます。腐葉土などがあまり堆積していない、有機物が少ない状態でも生長できるという、パイオニア種に相応しい特徴を持った種類なのではないでしょうか。となると、有機物由来の養分はあまり期待できないため、自らの力で吸収できるような土壌のミネラルや水分を主に必要とするのかもしれません。茎を切ってみると、中が中空になっていることからも、中身を充実させるよりも、とにかく早く体を伸ばして光を獲得する……という方向に特化しているのではないかと言うことも考えられます。

最後に、『動物によって運ばれる』植物の場合。通称、『くっつき虫』と呼ばれる種類の植物もありますが、ここでは主に動物に食べられて運ばれるというパターンの植物について考えてみたいと思います。これは何かと言うと、つまりは『果実』ですね。おいしい果実や目立つ実を付けることによって、動物に食べられる……というわけです。木本性の種子やナス科、ウリ科などが代表的なパターンですね。

こうして運ばれた種子は、動物の排泄物と一緒に土壌へと排出されます。つまり、有機物や窒素化合物が多めの養分と同時に生存する、ということです。これは要するに『多くの養分を必要とする』ということが言えるのではないでしょうか。……ナス科やウリ科の通説を思い出してもらえると、よく分かるかと思います。果実を付ける、ということからも同様のことが言えるでしょう。
特に、ナス科はアルカロイドと呼ばれる、動物にとっては毒となる成分を含むものも多く、種類によっては食べたものを死に至らしめるぐらいの猛毒を持った個体もあります(トリカブトなど)。これも『有機物の供給』という面で見た場合、実は非常に効果的な特性だということができるかも知れません……。

まとめ

と、このように、私は植物の種類によって要求される土壌特性というのが変わってくるのではないかと考えています。
これらのことを調べていくということが、遷移の流れについて知る重要な情報源となるのではないでしょうか。
引き続き、遷移について考えていきたいと思います。

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