生態学的に見た安定土壌

      2017/04/09

最近の農業界でも、色々と動きが起こってきているようですので、ここで私の大胆な仮説を展開したいと思います。

その一つが、『徐々に硬くなっていく土壌が最も安定する』という説。

これは、とある農業関係者の方からの話ですが、実はこれは生態系にも当てはまるのではないかと思っています。




物理性という視点

上記の方は、実際のデータ分析の結果からそれを発見したようなのですが、これを微生物の観点から見た場合、本サイトに寄稿して頂いている広瀬氏の分析は以下の通りだそうです。

『徐々に硬くなっていく土壌には、好気性微生物から嫌気性の微生物までのグラデーションが存在しているのではないか?』と。

これを聞いた時、私にもピン!と来ました。どういう事かというと、先に説明した植物の遷移において、正にこの事が起こっているからです。
最初は全くの無機土壌であった土に、次第に植物が生えてくると、その枯れた個体や残渣などが土壌に堆積していきます。そして、最終的に森となった時、そこへ落葉が積もっていった様子を考えてみると……全く同じ状況だということができます。

……図で表すと、こんな感じでしょうか。

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口口口口口口口口口口

この状態が、何を意味しているかということを考えてみます。

物理性の差とは何が起こっているのか?

以前、とある視察研修に参加した時、物凄い団粒構造の圃場を見たことがありました。そこでは良質堆肥をバンバン入れて、地上から2m近くもイボ竹が入ってしまうような、相当の団粒構造が形成されていました。

現在の農学では、団粒構造の土を目指すのが良いということで、このような土壌状態を作ることが推奨されています。しかしその圃場では、実際には『水はけが良くなりすぎて乾燥害が起こった』という話が聞けました。
……その圃場を図で表すと、こんな感じでしょうか。

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確かに、通常であれば団粒構造をしていると、作物はよく採れるのではないかと思います。が、やはりそれだけでは万能だとは言えません。土壌中の間隙において発生している毛管現象が起こりにくくなり、水分を保つことができなくなる可能性がある……ということがこのことで分かりました。

一方で、硬くなっていく土壌の場合。物理性を見てみると、まず地表部分には孔隙が多く、酸素が多く存在していることになります。そして、地下に行くほど酸素は少なくなりますが、今度は水分が存在していることになり、保水力があるということになります。これがまず一つ目。

続いて、生物性を見てみます。好気性微生物から嫌気性微生物へのグラデーションができているとすると、そこには単一的な生態系ではなく、多様性が存在していることになります。とすると、とある病原菌だけが大発生することを抑え、土壌菌のバランスが取れるようになると考えられます。さらに、有機物を餌にするものから無機物をキレートするものまで、土壌中で不溶化していた養分を可溶化する生物の種類が豊富になり、植物にとっての養分バランスも整ってくる可能性があります。

そして最後に生態系の部分。全くの無機状態だった土壌から、植物がミネラル等を吸い上げていきます。そしてそれが枯れて、地表に堆積します。するとそれを栄養源として、微生物たちが繁殖します。微生物たちはさらに不溶化しているミネラルなどを吸収しやすくし、同時にNやPを増やして行きます。植物に含まれるKも積み重ねられていきます。




まとめ

このように植物にとっての必須養分が集められていき、さらに植物群集は森へと遷移を進めていきます。そして落葉樹が辺りを占めるようになってくると、そこで養分循環が安定し始めます。針葉樹に比べて、落葉樹の葉にはミネラル分が多いそうです。その落ち葉が堆積し、保水力も備え、ミネラルは循環し始めます。

その頃になると、それほど枝の伸長は旺盛ではなくなるため、土壌に存在する分のみの生長で安定してくるようになります。また、土壌には徐々に腐植が形成されるようになり、そこでCECの上昇なども起こってくるようになる……というわけです。

ちなみに余談ですが、形成された腐植から発生するフルボ酸や腐植酸などが水系とともに流れだし、下流域の生態系をも豊かにしていく……というような現象も起こっているわけですが、ここでは割愛することにします。

というわけで、『徐々に硬くなっていく土壌が最も安定する』……かどうかはまだ検証中の段階ですが、このような土壌構造が生態系によってもたらされる土壌と非常によく似ている、という事実が浮かんできました。

続いてもう一つ、生態系によってもたらされる変化の仮説をご紹介したいと思います。

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